前回、JAMBOXが驚きの製品だったと書きました。しかし、それはUPの登場と比べるとまだ驚くというレベルではありませんでした。まさに青天の霹靂と言っても良いほどの衝撃を受けました。初めて紹介をしてもらった時の興奮は、今でも忘れられません。

Jawboneの代理店としていろいろ製品を販売してきたのに、新製品についての初回に際してNDA（秘密保持契約）を別途させられて、最初は資料も渡してもらえませんでした。それだけ用意周到に準備をしてきたのだろうし、鮮烈のデビューをしたかったのだと思います。

ちなみに、最初はUPと呼んでいたものの商標の関係でUP by Jawboneという1ワードで伝えるようにとなりましたが、日本では分かりやすいのでずっとJawbone UPと呼んでいました。また、ちょっと記憶が定かではありませんが、JawboneはActivity Trackerと呼んでいたと思いますが、私がライフログを取るリストバンドということで、ライフログリストバンドという名前にしました。

毎日を記録するライフログというのは一時期流行った言葉で比較的頭に入りやすかったことと、これまでのアクティビティトラッカーと異なるのがリストバンド型だということでしたので、そこを品名から強調したかったのです。日本だと1番認識できるのが「万歩計」もしくは「活動量計」でしたが、どうしても「おぢさん（失礼）」のイメージが強かったので避けました。

知らない方のためにUPについて軽くだけ説明します。UPはまるでアクセサリーのように手首につけるリストバンドで、そこにセンサーが内蔵されていて、歩く歩数やその活動量を計算したり、そのまま寝ることで睡眠の質を計測したりすることができる製品です。これまで、ベルトクリップなどのタイプだったり、とても大きな計測器だったり、スマートフォンとの連携ができなかったり、バッテリーが持たなかったりと、さまざまな問題を抱えていたのを一気に解決したのがUPでした。

これは、本当に今でも他の製品には実現していないことだと思いますが、アクセサリー感覚でガジェット感が少なく、自然に毎日の自分の行動を記録できるのです。初期モデルはバッテリーの持ちを最大限考慮して、スマートフォン（当時はiOSのみ）と有線接続するというのも考え抜いた末の設計だったのです。これにより、無線にまつわる設定や接続トラブルからも解放されました。後にBluetooth 4.0 BLEが出てきて、ある程度のバッテリー持続時間と一度設定をしてしまうとそれほど問題なく接続できる技術が確立して以降はワイヤレスに移行しました。

万歩計、活動量計としては破格の高価格である13,800円ながらも、発表から恐ろしいほどの反響があり、予約が殺到、AUGMなどのイベントでも取り合いになるくらいの売れ行き、各販売店でも売り切れ続出となりました。当社始まって以来の大ヒットだったと言えます。

あまりにも販売店の受注が多すぎて、予約を中止したり、お詫びを出したりというような事態も初めての体験でした。ある販売店では在庫を用意するまでは帰さないと謎の要求で缶詰にされたり、次回の入荷はすべてウチに寄越せと言われたり、今思えば笑い話ですが、当時は相当なプレッシャーを受けたものです。

UPは、製品としては先進的、かつデザインに優れ、私自身も手放せないもものでしたし、大好きでした。今でも製品コンセプトとしてはこれを超えるものは出てきていないと思っています。開発チームとも、いつかは食事も写真を撮るだけでカロリー計算できるようなって、摂取と消費を管理できるようになると完成だねと話していたり、体重計との連携や、スポーツジムとの連携もいろいろと話をしていました。詳しくは書けませんが、大手キャリアや大企業グループとの提携も話し合いが進んでいました。

人々のライフスタイルを変え、より健康にすることができる製品。いろいろなことが思い浮かび、新たな取り組みも実際に始まっていたところもありました。

しかし、そこに大きな落とし穴が待っていたのです。

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[Jawboneとの思い出 バックナンバー]
・Vol.1 出会いから、日本へ導くまで
・Vol.2 ローカライズとビジョン
・Vol.3 驚きの新製品JAMBOX
・Vol.4 驚きを超えた衝撃のUP登場
・Vol.5 終わりの始まり
・Vol.6 終わりの終わり